【保護者向け】発達検査を受けた後どうすればいいか?(3)

こんにちは、きょんです!

私は教育関係施設で心理士として働いており、幼児~高校生までの子・保護者と日々会っています。その中で発達検査(WISC-4という知能検査が念頭に置かれている場合が多い)に関する相談もよくお受けします。

 

先日、「発達検査を受けた後どうすればいいか?」の(1)と(2)の記事を書きましたので、今日はその続きです。

educp.hatenablog.com

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なかなか終わらずにすいません・・・毎回書き始めると長文になってしまい途中で切らざるを得ませんでした。

 

この一連の記事では、発達検査を受けた後に考えられるとよいポイントを3つ上げました。

それは、

1,親の「わが子理解」を確認する

2,外部機関の利用について考える

3,家庭でできることを考える

です。

いよいよ今日は3について書きます。

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3,家庭でできることを考える

(1)親(家族)の関わりを確認する

結果を聞いたときには、家庭でできることは何かも聞きましょう。発達に凸凹がある場合、今後のサポートとしてとても大雑把に言うと、環境調整と療育が考えられます。

もしお子さんが心理的に傷ついている場合には、心理療法(子どもの場合はプレイセラピーという遊びながら傷を癒す方法。プレイセラピー自体に発達を促すこともあります)も検討されますが、これは外部機関の利用に当てはまりますね。

ですがその前に、今の親子(家族)の関わりを確認しましょう。自然とお子さんにとって分かりやすい関わりをされている親御さんもいらっしゃいます。例えば「一度に伝えるのは1つまで」とか、適切な行動ができたらすぐほめるとか。

一方で、お子さんにとって分かりづらい関わりになっている場合もあります。例えば、知識と行動が結びつきにくいお子さんに、「早くしなさい!」と言葉だけで伝えていないでしょうか?あるいは「ここでは走らないでって言ったでしょ!」「忘れ物したら勉強できないよ」と否定形(○○してはいけない、○○しないと△△できないという伝え方)で伝えて終わっていないでしょうか?否定形で伝えると「具体的にどうしたらいいから提示されていない」ため、お子さんからするとどうしたらいいのかわからないままになりがちです。従って、これらは残念ながら適切な行動につながることは少ないです。

さらに言えば、してはいけないことをしたお子さんに、長く注意をしていないでしょうか?感情的に注意していないでしょうか?これらも残念ながら、長く言われても内容が一部しか残らないとか途中で覚醒水準が下がって眠くなるお子さんもいたり、「気持ちをこめて」という名のもとに感情的に伝えた結果、お子さんには「注意した内容」ではなく「何がダメだったか分からないけれど怒鳴られた」体験だけ残ってしまったりすることが往々にしてあります。これらについても基本的には「注意するときは端的に、声に抑揚をつけず」が望ましいです。

もちろん親とはいえ聖人君子ではありませんので時として否定形で伝えたり感情的になることもあるかと思います。それはやむを得ないことです。しかし基本形を知っておくことは大切です。

まずは、良い悪いは別にして、日ごろどのような親子(家族)でのコミュニケーションや関わりがなされているかを確認しましょう。こういう時には頭の中だけで思い出すこともいいのですが、書き出すことをお勧めします。そうすることで状況が整理されて客観視しやすくなるからです。一人でするのがなかなか難しい場合もあるかもしれません。その場合には、相談機関やスクールカウンセラーなどに相談することも1つです。

 

(2)生活場面でできることがないか調べる

(1)で書いたように、生活場面でのサポートとして大きく①環境調整、②(家庭)療育があるのでこれらについてご紹介します。また、これは生活場面ではないですが③心理療法についても簡単に触れます。

①環境調整:家庭での環境調整ということです。例えば、朝したくが遅い要因として周りの刺激(おもちゃやテレビなど)に引っ張られやすいことがある場合は、したくをする部屋のおもちゃを撤去したり、それが難しい場合には大きな布で覆って見えなくする、テレビはしたくが終わってからつけるなど、家庭内の刺激を減らす工夫があるでしょう。「早くしなさい!」は全国の多くの家庭で言われている注意かと思いますが、環境を変えることで行動が変わって、昨日よりも少ししたくしやすくなることがあります。

②療育:家庭でできる療育のことを「家庭療育」と言います。療育機関には通園施設のように毎日通うお子さんもいるでしょうが、週1回、2週に1回などしか通えないお子さんもいるでしょう。その場合、どうしても生活で困ったことを減らして望ましい行動を増やしていくのに時間がかかりがちです。発達凸凹のあるお子さんの場合は特に、学んだことを生活に広げる(般化といいます)ことが苦手なことが多いので余計です。そこで、家庭ででもできる療育的な関わりはどんどん家庭でもしていこうという考え方、これを「家庭療育」と言います。ここでの「療育」は専門家しかできないことではなく、「丁寧な子育て」という位置づけです。

家庭療育をする時に、非常に具体的で参考になる本があります。

筆者の橋本さんは30年子どもの療育現場で、鹿野さんも30年以上成人の支援現場で働く根っからの「臨床家」の方々です。特に橋本さんはトモニ療育センターの河島淳子先生(医師、自閉症のあるお子さんを育ててこられた)の教えを受け、生活のしやすさの根っこにある「時間」「数字」の学びに重点を置いた療育をされています。でももちろんそれだけではありません。例えば「あいさつができると気持ちが切り替わる」「手はひざができると子どもの姿が替わる」など適切な行動への手立てがかなり具体的に書かれています。私の知る限り、一般書は上記の環境調整について書かれて終わり、というパターンをよく見かけるのですが、この本はもっともっと突っ込んだ内容が書かれています。指先の不器用さや体感の鍛え方に対しても生活の中でできる工夫が書かれています(折り紙や手押し車など)。

 

以上は、比較的小学校低学年ぐらいまでの人を念頭に書きましたが、ご紹介したお二人による「学齢期編」も出ています。

心理療法(プレイセラピー):これは心理的に傷ついた子どもたちへの援助が必要な場合に行われることが多いです。例えば学校で本人は頑張っているのに行動や気持ちの切り替えがうまくいかずにクラスメイトとトラブルが頻発し「どうせ俺(私)なんて・・・」と自己評価が下がっていたり、心理的なことが要因で腹痛や頭痛などの身体症状が出たり、不登校で元気がなくなって引きこもりがちになって子ども自身が苦しんでいる時などがそれにあたります。そのような場合、家庭で求められるのは(物凄く短く言うと)子どもへの情緒的なケアであることが多いです。スキンシップ、(悩みでも興味ある話題でも)話を最後まで聞く、一緒に遊ぶ、ほめる、などはよく行われますよね。外部機関に専門的な援助を求める場合、心理的に傷ついたときに大人なら言葉をやりとりするカウンセリングを行えることが多いですが、子どもの場合は大人ほど言葉の扱いに慣れていません。そこで言葉の代わりに遊びを使います。これをプレイセラピーと言います。自由な遊びを通じて気持ちを表現することで傷つきを癒していくプロセスです。もちろん子どもでも言葉でやりとりができる人もいます。ただし、これは私の個人的意見ですがプレイセラピーで心理的な傷つきが癒えたとしても、周囲との関わりが以前と同じであれば再び傷ついてしまう可能性があります。従って、環境調整や療育も同時に行われる必要があると思っています。プレイセラピーでの遊び自体が発達を促すこともありますが偶発的になりやすいので(その方がいいお子さんもいると思いますが)療育を受けられるならその方が合う人が多いかと思います。

(3)最も基本的で大切なこと

3つ目に最も基本的で大切なことです。それは「日頃の親子関係がよいこと」です。でも実はこれが一番難しいかもしれません。一生懸命の親御さんと、うまくいっていないお子さんがいて、二人がかみ合わないとき、お互い辛い気持ちを抱くことが多くなります。

何をもって「親子関係がよい」とするのかはひとそれぞれですが、「子どもがのびのびしていること」だと私は思います。そのための親の基本的な姿勢は「親バカ」です。子どもを客観的に正確に把握し続けると何が起こるか?されたことのある人は分かるかもしれませんが、「真意を見せずに距離を置いて観察されている」と感じるのです。私は心理職の駆け出しのころ、同僚からこの眼差しをされたときに瞬時に気付きました。また、これは若かりし頃の反省ですが、行動観察に重点を置きすぎた結果、来談していた子どもから同様の指摘をされたこともあります。子どもたちは敏感です。観察されている感じを抱いたとこりに、安心感は少ないです。対人援助職の子どもには二者関係の障害が多いのは観察癖が家庭でも抜けないからだ、なんていう指摘も聞いたことがあります。

ということで、観察も大事なのですが親のひいき目で「親バカ」をすることは、子どもからすれば「親は自分を信じてくれている」「親といれば希望を感じられる」という気持ちを抱くことにつながりやすいようです。

発達凸凹のあるお子さんの親御さんの中に、とても一生懸命だけれども対人スキルを身に付けさせたり、家庭療育が生活の全て!となっている方もいらっしゃるので敢えて「親バカ」をお薦めしました。

そうそう、もう少し専門的に言えば、たとえばADHDの療育プログラムの中にDIRモデル(Developmental Individual Relational モデル。発達段階に合わせて個人差を考慮して人間関係を大切にした療育モデル)というのがありますが、そこには「フロアタイム」と言って子どもが一定時間自由に遊べる時間が設定されます。これについて詳しく知りたい方は精神科医の広瀬宏之先生が監訳されたこちらの本が読みやすいです。

また、もう少しライフステージに沿った子育ての大切な関わりについて知りたい方は、精神科医杉山登志郎先生のこちらの新書も読みやすいと思います。

 

ということで、「親バカ」による良い親子関係という土台の上に、環境調整や家庭療育が行われて有効なサポートになる、というお話でした。うーん、まとめたら当たり前の話でしたね💦

 

これにて「発達検査を受けた後どうすればいいか?」の記事を終わらせていただきます。少しでもご参考になりましたら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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