【保護者向け】発達検査を受けた後どうすればいいか?(2)

こんにちは、きょんです!

私は教育関係施設で心理士として働いており、幼児~高校生までの子・保護者と日々会っています。その中で発達検査(WISC-4という知能検査が念頭に置かれている場合が多い)に関する相談もよくお受けします。

先日、「発達検査を受けた後どうすればいいか?(1)」の記事を書きましたので、今日はその続きです。

educp.hatenablog.com

この記事では、発達検査を受けた後に考えられるとよいポイントを3つ上げました。

それは、

1,親の「わが子理解」を確認する

2,外部機関の利用について考える

3,家庭でできることを考える

です。この内1について上記の記事で書きましたので、今日は2についてです。

今回こそは全部終わらせようと思ったらまた長くなってしまいすいません・・・3は次回ということでお許しください;

 

2,外部機関の利用について考える(担任、特別支援教室・学級、医療機関、民間療育機関)

1で「わが子理解」を確認したら、次は、その苦手さをカバーする手立てを考えることです。方法として外部機関を利用することがあります。利用先として多いのは、

(1)学校

 ①担任に授業中の合理的配慮について相談する(例:個別の声掛け、教室から出てしまう時には行き先を決める)

 ②特別支援教室の利用について担任や担当教員と相談する

 ③特別支援学級への転籍を学校・教育委員会と相談する

医療機関

⑶療育機関

の3つです。

 

(1)学校

①担任に授業中の合理的配慮について相談する

まずはここからじゃないでしょうか。校内だとお子さんたちが過ごす時間が1番長い人が多いかと思いますので。中には今は学校に行けていない人もいるかと思いますが、戻ったときの配慮を話し合えておくとお子さんが安心することもあります。まあこれはタイミングを見る必要がありますが…

担任への相談のときに保護者が気をつけるとよいと私が思う点をいくつかご紹介します。

(a)して欲しい支援は「相談」という形で持ちかける

学校の先生方はプロなので、各自で考えている教室運営があります。また時間的、人材的制約もかなりあります。従って「○○してください」というお願いの仕方では「いや、この学年では○○は一人でできるようになってもらわないと」という形で言われたり、「できればしてあげたいんですが、時間が・・・(人手が・・・)」と言われて話し合いが終わってしまうことがあります。ですので「今回検査結果で○○と出たので、その部分のサポートについてご相談したいんですが」とか「先生のクラスだとどんな形で配慮をお願いできるものでしょうか?」など「相談ベース」で話を持っていくことがコツだと思います。

(b)支援の結果を確認する

お願いのしっぱなしだと支援の効果が分かりません。ここはお手間かもしれませんが、支援が開始されてしばらく(例えば2週間ぐらい)経ったら担任に連絡して支援の効果を確認しましょう。家庭で確認できることがあれば(例:わが子がいつもより機嫌よく帰宅する、具体的にしてもらったことがよかったと言う)ぜひ担任にフィードバックしましょう。そうすることで担任は「この支援がいいんだ」と分かるからです。また、フィードバックをすることで、うまくいっていないと「じゃあ○○というのはどうですか?」など継続的にわが子にフィットした支援を模索していくことにもなります。これにより「一度相談して終わり」になることを防ぎやすくなります。

(c)家庭でしてみてうまくいった工夫を具体的に伝える

少しでも有効な手立ての方が先生たちも校内での支援を考えるのに助かります。担任の先生方って、かなり多忙でマンパワーが補充されない中で指導をされています。イメージで言うと、コップに水がギリギリ入っていて、あと数滴であふれ出す感じです。保護者には見せないと思いますが、気持ちがいっぱいいっぱいな先生方も少なくありません。ですから有効な手立てを考えるヒントがあれば、時間も思考も節約されて感謝されることが多いと思います。

(d)担任に相談してダメなとき

残念ながら話し合いがしづらい担任もいらっしゃいます。こだわりが強い(例:書字指導ではね、はらいなど細かい部分にこだわる)とか。らちが開かない時は遠慮なく管理職や教育委員会に相談しましょう。これは告げ口ではなく、わが子のための正当な権利です。日頃よく見聞きする順番は、教頭(副校長)→校長→教育委員会が多いですね。

 

②特別支援教室の利用について担任や担当教員と相談する

これは先日の記事にも書きました。

educp.hatenablog.com

地域によると思いますが、特別支援教室や通級での指導について正しく情報収集しましょう。

相談先は、まずは担任になることが多いです。詳細が分からないと言われたら遠慮なく、特別支援コーディネーターと相談を希望しましょう。特別支援コーディネーターは校内での「特別支援に関する窓口」になってくれる先生です。おそらく多くは教職員が兼務されているはずです。ここで、その学校での特別支援教室や通級教室の利用者数や利用実態、指導内容などを尋ねてみましょう。コーディネーターは経験年数が長い人もいれば、昨年度まで特に特別支援に携わっておらず今年度その先生に業務的余裕があるから任される、みたいなこともあるようです(それでも懸命に研鑽されています)。その場であやふやな答であれば要望を整理して、〆切を設けて返事を待ちましょう。コーディネーターの返事でさらに詳しく知りたいということであれば、管理職に直接相談か、特別支援教室や通級の担当教員に直接話を聞けるか相談するのも1つかもしれません。

特別支援学級への転籍を学校・教育委員会と相談する

これについては、私自身は現場での経験はそれほど多くありません。ですので公表資料をまとめた情報になります。

基本的に通常級から特別支援学級への転籍は可能です。根拠は、文科省は2021年(令和3年)6月に発表した「障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~」の中で「就学後の学びの場をスタートにして,可能な範囲で学校卒業までの子供の育ちを見通しながら,小学校段階6年間,中学校段階3年間の就学先となる学校や学びの場の柔軟な見直しができるようにしていくことが必要である」(P.42)にある通りです。ただし実際には、お住いの市区町村の教育委員会で「就学相談」をして転籍に適当と思われる特別支援学級があるかどうかなどよく検討する必要があります。

例えば、知的障害を伴わない発達障害ASDADHDなど)のあるお子さんの場合、特別支援学級の中でも「自閉症・情緒障害特別支援学級(通称は情緒級、情緒固定など)」に転籍することがあります。文科省の2020年(令和2年)の「特別支援教育行政の現状及び令和3年度事業について」には、「自閉症・情緒障害特別支援学級」に在籍する児童生徒数は29,287人と、他の障害種のある児童生徒数よりも多いことが記載されています。

ところが、例えば東京都の場合「自閉症・情緒障害特別支援学級」の数は少ないです。これは東京都が、発達障害のある児童生徒への指導は特別支援教室や通級指導教室で行うという考えを持っているためです。しかしそれでもニーズがあったのでしょう。各市区町村で少しずつ特別支援学級が増えています。こちらのしおこんぶさんのサイトで2020年10月現在の都内の「自閉症・情緒障害特別支援学級」の設置校についてまとめられています。こちらに加えて、豊島区(H29年度)、世田谷区(R3年度に2校、R6年度に1校設置予定)、立川市(R3年度に1校)もあるようです。他もあるかもしれません。

このように、まず物理的条件として特別支援学級に転籍したくてもお住いの市区町村に必ずあるとは限らない、あっても通える距離か分からないということがあります。次に指導内容、クラスメイトの様子などはお住いの市区町村での就学相談で、可能なら見学や担当者から聴取によってできる範囲で確認できると思います。そして進学について。これも就学相談で予め相談されておくとよいともいます。例えば中学で特別支援学級に入ったらが高校は通常級でいきたい人などは、実質的に実現可能なのかどうか(特別支援学級の先生方は通常級の高校受験について詳しくない方もいらっしゃいましたのでその場合は適切な相談先を紹介してもらいましょう)。こういったことも、転籍前に確認しておけるといいかと思います。

いずれにせよ、環境の変化に敏感なお子さんも多いかと思いますので、丁寧に慎重に話を勧めていけるとよいと思います。

(2)医療機関

医療機関に何を求めるかによって変わってきますが、診断、治療が多いように思います。診断でよくあるのは、「未診断で検査を受けた結果、福祉サービスの利用や学校での理解をしてもらう根拠として、あるいは親(もしくは子)が発達障害の可能性について医師の意見を聞きたくて受診する」というパターンでしょうか。治療については、検査結果が出たからというよりは、「すでに生活で見られる発達凸凹からくる不安や不眠など精神症状について治療を受ける」「多動衝動性について服薬による改善の可能性について相談する」というパターンがあります。

子どもを見てもらう場合は、児童精神科や心療内科、小児科になることが多いようです。

 

(3)療育機関の利用

わが子の課題が分かり、改善あるいは発達促進のために療育を利用するということもあります。療育機関は、お子さんの課題や困りごとの解決をはかり社会的自立へ向けて支援をしてくれる場所です。といっても抽象的すぎると思います;例えば、対人関係が苦手なお子さんなら、SST(Social Skill Training;ソーシャルスキルレーニング)という対人関係のスキルを学ぶなどです。各市区町村で療育機関を開設しているところもありますが、利用年齢の確認が必要です。就学前までは市区町村で、就学後は民間の療育機関で・・・という場所も割とあるように思いますが、お住いの市区町村で結構違うかと思います。民間の療育機関は昔から地域に根差してやってこられたところもある一方で最近は全国展開の療育機関もあります。代表的かなと思うのは「リタリコ」ですかね。都心では利用希望が多くてウェイティングがかなり出ているとか。

junior.litalico.jp

 

民間の療育機関の中には、福祉サービスとしては「放課後デイサービス」という形で行われているところもあり、熱心にされている事業所が多いのですが、(これはあくまで個人的感想にすぎませんが)一部、「それ放課後デイですること?」と質が心配になる事業所もないとは言えません。質のばらつきについては厚生労働省も認識しているようです。本来放課後デイサービスは、「①自立支援と日常生活の充実のための活動」、「②創作活動」、「③地域交流の機会の提供」、「④余暇の提供」の4つを「すべて」行う必要があるようですが、実際はどれかに偏っている事業所もあるようです。具体的に厚労省が課題としている例として「①安全な預かりに偏っていると見られる事例」「②学習塾的な支援に偏っていると見られる事例」「③習い事と変わらない支援を行っていると見られる事例」などを挙げています(R3年度 放課後等デイサービスの現状と課題について P.12~)。

ですので、利用を考えるときは、実際にいくつかの事業所を見学・相談して決められる方がよいように思います。

 

今回はここまでとなります。

最後までお読みいただきありがとうございました!

 

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