【保護者・関係者向け】プレイセラピーって何?

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こんにちは、きょんです!

私は教育関係施設で心理士として働いており、子どもの相談にのる方法の1つとして、プレイセラピー(遊戯療法)を行うことがあります。

 

そこでも「プレイセラピーって何ですか?」「遊びと何が違うんですか?」など尋ねられることが多いです。また、学校などに巡回に行っても、先生方は悩みを抱える児童生徒について「○○センターでプレイセラピーとかいうのを受けてるらしいんですが・・・」というものの何かが分からないという声も聞きます。

 

というこで、今回は「プレイセラピーとは何か?」について、専門的な内容は極力減らしてご紹介をしていこうと思います。

 

要点は以下の3つです。

・プレイセラピーとは何か?

・プレイセラピーと普段の遊びとの違いは何か?

・プレイセラピーの始まりと終わり

1つずつ、掘り下げていきます。

1,プレイセラピーとは何か?

プレイセラピーとは、遊びを介した心理療法です。

大人の場合は、基本的には言葉で悩みや困りごとを伝えて相談(カウンセリングなど)しますが、子どもの場合は大人ほど言葉でそれらを伝えることが難しいです。

そこで、言葉の代わりに遊びを使って、悩みやそれにまつわる色々な気持ち(怒り、悔しさ、悲しみ、落ち込み、寂しさなど)を表現していくことになります。それらの表現を通じて心の問題に取り組み、元気を回復していくことを目指す心理療法と言えます。

 

ではどのような心の問題に対して行われるセラピーなのか?

これは心理的な傷つきなどに対して行われることが多いです。お子さんに対して様々な心配事が現れたとき、その背景にその子に心理的な傷つきがあると思われる場合があります。例えば、子どもの場合に多いですが身体症状(腹痛、頭痛、吐き気、チックなど)が続いていて、医療機関に行ったけれど「(器質的には)異常なし」と言われることがあります。それなのに、身体症状が続いている場合に、その背景に心理的な傷つきが想定されることがあったりします。具体的には、あくまで一例ですが、学校や家庭でうまくいかない体験を重ねることで自信を失っていたり、「いい子」で頑張りすぎてそうじゃない自分をないがしろにせざるを得なかったり。こういうことが想定され、プレイセラピーがその子の回復に役立つかもしれないと判断されると、導入されることがあります。

 

あと、例えば「発達障害のある子にプレイセラピーは意味がない」と言われることもありますが、その子に心理的傷つきがあればその回復には有効です。また、心理士と1対1で特性を踏まえて遊ぶことで少しずつ発達が促されることもあります。ただし、これはあくまで私個人のやり方ですが、その子が具体的な人間関係でのスキルを身に着けるほうがいいと思うときには、学校の特別支援教室や療育機関などをお勧めします。そこでスキルを身に着けてもらう方が、日常生活での人間関係がうまく回って子どもの回復が早くなることもあるからです。これはその職場の状況などにもよるでしょう。

 

プレイセラピーは日本では遊戯療法と訳されることが多いのですが、遊戯療法学会会長の山中康裕先生は「表現療法とすべきだ」とおっしゃっていて、私も賛成です。遊びという手段を通じて様々な思いを表現する療法という言い方の方が実態に即していると思います。

 

もう少し詳しく説明すると、プレイセラピーは「遊び」を手段として表現しますので、特に決まった方法はありません。多くの場合は、決まった時間(60分とか50分とか40分とか、施設によって多少違います)、担当の心理士(セラピスト)と1対1で過ごします。時間になったら子どもがいくらまだ遊びたくても原則的には終わります。そしてまた、1週間~1か月後などにやってくる・・・これをしばらくの間繰り返します。

するとその中で子どもたちは、ネガティブな表現をし始めます。例えば、心理士をチャンバラでボコボコにやっつけたり、勝負ごとでズルをして勝っているのに「それでも大人なの。弱っ」などとなじり続けるなど、表現は様々です。こういう表現は日常生活ですると「そんなことしては(言っては)いけません」と規制の対象になりますよね?でもプレイセラピーでは心理士が止める判断をしなければ表現できます。なぜなら、そこには怒り、悔しさ、悲しみ、落ち込み、寂しさなど様々な気持ちが込められていることがあるからです。自分がされた体験を心理士に味あわせることで自身の体験を伝える子もいます。

ですので、時折「プレイセラピーは子どもが楽しく遊ぶ時間」と誤解される保護者の方もいらっしゃいますが、そうではありません。むしろ普段はなかなか表現できない気持ちを示して、心理士にしっかりと受け止めてもらい、時には話し合うことで問題の解消に向かっていくのです。

※ただし、日常生活で楽しい時間を持てない子の場合にはプレイセラピーで楽しい時間を持つことが一時的に支えになることもあります。

 

2,プレイセラピーと普段の遊びとの違いは何か?

「え?家でもチャンバラしてるよ?プレイセラピーと普段の遊びと何が違うの?」という質問もよくいただきます。確かに普段の遊びでも、子どもたちが遊んでいる内に晴れやかな顔になっていくことはありますよね。それに大人の私たちだって、遊んでいると気力が充実してきて気持ちよくなることもあります。でも「遊びによる気持ちの発散」はプレイセラピーを構成する要件の1つにすぎません。

では何が違うのか?

これに答えることは簡単なようで難しいのですが、端的に答えるなら、竹内健児先生

『Q&Aで学ぶ 遊戯療法と親面接の考え方・進め方』に載っていた内容が分かりやすく引用させていただきます。つまり

(1)セラピーとしての目標をもつ

(2)遊びを心の表現と受け止める

(3)どんな心の作業をしているのかを自覚しながら進める

の3つです。以下に抜粋して引用させていただきます。

(1)セラピーとしての目標がある

セラピーとして行うということは、個々の支援目標があるということです。例えば、いわゆる「いい子」過ぎて不登校になってしまった子がいるとすれば、学校に行くことが目標ではなく、プレイセラピーでは「いい子じゃない自分も出していいんだと思えるようになっていく」ことが目標になることがあります。そして、その目標達成を意識しながら心理士は子どもと遊んでいくことになります。そして、年齢や知的発達段階に応じて、多少なりとも子ども自身もプレイセラピーになぜ通っているのかを分かり、心理士と共有できていることが大切です。

普段の遊びは、「遊ぶことが目的」ですので、このように支援目標を設定して行うことは少ないと思います。

(2)遊びを心の表現と受け止められる

プレイセラピーでは、上述してきたように遊びは表現の1つです。ですので、プレイルームに入ったその瞬間から、子どもの一挙手一投足は全て心の表現として受け止めます(少なくとも私は)。だからといって、じーっと観察するよう目を向けている訳ではあありません(この辺の、一緒に遊ぶのと観察するのと塩梅は経験を積んでいくしかないように思います・・・)。

例えば、先ほどの「いい子」の場合に、いつもおもちゃを自ら棚などから持ってきてくれていた子が、あるときにそれをしなかったら?心理士の質問にいつもまじめに答えていたのに「ええ?」とウザそうな顔をしたら?心理士はもしかすると「少しずつ自然な気持ちを出せるようになってきている」と捉えるかもしれません。つまり、ある支援目標に向けて、今の表現がどういう意味を持っているのかを考えるということですね。この例はかなりシンプルな内容ですが、いずれにせよ「心の表現として考えてみる」ということが心理学的な仮説につながり、支援につながっていくことになります。

普段の遊びでは、いつ終わるかもわからない中で、これをし続けることはなかなか難しいように思います。プレイセラピーでは1回あたりの時間が限られているからこそできることかもしれません。

(3)どんな心の作業をしているのかを自覚しながら進められる

その子の遊びや表現が、どんな心の作業をしているのかを心理士は自覚しながら進めていきます。例えば、抑え込まれていた感情が表現されて凝り固まっていたのものが氷解しているのか、ダダ漏れだったエネルギーを自己コントロールできるようになってきているのか、周りに認めてもらえなかったと感じていた子が自分を承認されていると捉えているのか、などです。

もう少し具体的な例で言えば、例えば「いい子」でやってきた子が、遊びで心理士にどろぼうをさせて、自分は警官をしてドロケイをし続けたあとに、立場を入れ替えるとか、その内、ドロボウ役の心理士にちょっと優しくなるとかすることで、その子が自分の中に少し「悪い子」も収めるようになってきているのかもしれません。他にも、不登校の子がずーっとブロックで城を作り続けることで、周りからの刺激から自分を護る壁を作ろうとしているのかもしれません。

このように、その場で行われる遊びがどのような心の作業として行われているのかを心理士は見ながらお会いしています。もちろん、これらは仮説であり、その都度保護者からのお話やプレイルームでの様子を踏まえて修正されていくものでもあります。むしろ初めの仮説に凝り固まらずに適宜修正できる心理士の方が私は信頼できます。

普段の遊びでは、1つ1つの遊びについて、どういう心の作業が行われているかを踏まえながら遊ぶというのは難しのではないでしょうか?これはプレイセラピーがいつも決まった部屋で決まった相手と遊ぶという環境がある程度固定されていることや、心理士が多くの心理学理論を学んでいるからこそ分かることではないかと思われます。

 

3,プレイセラピーの始まりと終わり

では、プレイセラピーはどのように始まり、どのように終わるのでしょうか?実際はかなりケースバイケースですが、大まかにご紹介したいと思います。

(1)始まり

これも医療機関や相談機関によってかなり違ってくるかと思います。「うちの子にプレイセラピーをしてほしい」という方も最近はいらっしゃいますが、まだまだ多くの場合は、先んじて何か我が子に心配なこと(不登校、過剰適応、学校での離席・暴言・友達とのトラブルなど)があって、その相談をしていると先方の医療機関や相談機関のスタッフから提案されることが多いのではないでしょうか?

私は教育関係施設でプレイセラピーを行うことがありますが、まず保護者と面談をしてお子さんの状況から問題をある程度想定して、必要に応じてプレイセラピーを提案します。そして、週1~月1のペースで来室していただきます。1回50~60分です。親と子は別の担当がついて対応させていただいています。これも意味があるのですが、またの機会に・・・

あ、それと、プレイセラピーの期間ですが予め設けることは私の周りではあまり聞きません。ですが、予め期間限定でされるところもあるように聞いています。「いつまで通い続けなければならないんだ」と思われたら、ぜひ担当に率直に尋ねてみてください。そこでお子さんの変化や心配事に対してどれぐらい課題が緩和されているか、支援目標に近づいているかを話し合えるとよいと思います。

加えて、プレイセラピーが始まった直後に、一時的に不適切な言動が増えることがあります。これはそれまで抑えこまれていた気持ちなどが一気にあふれ出すときなどに現れます、親からすると「通って却って悪くなっている!」と思われるかもしれませんが、たいていの場合はプレイセラピーを続けていると比較的早く収まっていくと思います。

(2)終わり

では終わる時はどうなるのか?これは、プレイセラピーでの変化と、日常生活での変化の2つの側面から点検していく必要があります。プレイセラピーでの変化は、同じ遊びが繰り返されているようでもわずかにニュアンスが変わって来たりする(遊び方、部屋の使い方、イメージ表現の仕方など)ので保護者の担当者に尋ねるとよいと思います。日常生活での変化は、保護者の前で変わってきてくれたら捉えやすいですが、学校など別の場所で「最近、ちょっと変わってきたね」と言われることが出てきたりします。

また、これは割とよくあることですが、子どもがプレイセラピーの時間に「友達と遊びたい」と言うことがあります。プレイセラピーの経過などを踏まえる必要がありますが、この発言が出たら、遠慮なく担当者に伝えてもらえたらと個人的には思います。子どもの中でプレイセラピーの必要が下がってきているサインかもしれないからです。

保護者と担当者、子どもと子どもの担当者が色々と話し合って、終結ということになったら、すぐ終わるのではなく、「終わりの期間」を設けてあげることが望ましいと思います。大人から見るとただ遊びに来ているだけに見えても、子どもからすれば、大げさでもなんでもなく、自分の問題に取り組んでいるのです。象徴的にですが、生き死にに関わることもあります。ですから、終わる数カ月前には、子どもと子どもの担当心理士も終わることを確認し、終わりを互いに自覚しながら遊ぶことで、プレイセラピーでしてきたことを振り返ったり、そこで更に問題に深く取り組むこともあります。結果として、安定した状態で終わりを迎えやすくなります。

また、子どものプレイセラピーが終わっても、保護者の相談は続けられる医療機関・相談機関もあるかと思います。子どもは元気になったけれども保護者としてはまだ心配ということならば、保護者の相談を続けることも1つでしょう。

 

以上、今回は保護者や関係者向けに、できるだけ専門用語を使わずにプレイセラピーについてご紹介しました!

特に

・プレイセラピーとは何か?

・プレイセラピーと普通の遊びとの違いは何か?

・プレイセラピーの始まりと終わり

に要点をしぼってみました。

 

今回、参考にさせていただいた本は、

 

の2冊です。

 

ご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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