ネガティブな感情と付き合う工夫

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こんにちは、きょんです!

 

今回はネガティブな感情との付き合い方を学べる一般書をご紹介します。

精神科医である樺沢紫苑先生の『人生うまくいく人の感情リセット術』(三笠書房 知的生きかた文庫)

です。こちらの本は売れているようで、例えばAmazonの知的生きかた文庫の売り上げで1位を取るなど売れているようです。

家庭や会社、学校などあらゆる場面で、私たちは人間関係で悩むことが多いのはないでしょうか?

そのときに相手を変えることが現実的に難しい場合、ターゲットとなるのは自らの感情です。樺沢先生によれば、3000件の相談の内、9割が「ネガティブな感情」が原因とのことです。

目次はこのようになっています。

はじめに 感情リセット―人生のマイナスを確実に「プラス」に変える法
1章 この1冊で「世の中の悩みの9割」が解決できる!―感情リセット術の「基本」
2章 人生うまくいく人の「一瞬で気分を変える」法―「心が前向きになる」感情リセット術
3章 できる人の「一気にやる気を高める」法―「モチベーションが持続する」感情リセット術
4章 人間関係うまくいく人の「嫌いを好きに変える」法―「困った人がいなくなる」感情リセット術
5章 毎日充実している人の「どんな悩みもサッと消す」法―「マイナス要素をゼロにする」感情リセット術
6章 「感情のリセット力」を高める脳の習慣―「人生さらにうまくいく」感情リセット術

 

なお、ご紹介前に1つ申し上げておきたいことがあります。

感情を「リセット」とか「『苦しい』を『楽しい』にしよう!」などという考え方が苦手な方へ。

「明るく楽しくを強要されているようで苦手」「自分の感じたネガティブな感情を価値がないとか、ダメなものと言われているようで苦手」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。かくいう私がそうです(笑)。どんなネガティブな感情にも付き合うことで本当に感じていたこと、言いたかったことに気づくことが珍しくないからです。

その場合、本書で出てくる「楽しい」を「ラク」と読み替えてみてください。

あとで述べますが「楽しい」の中には「リラックス・やすらぎ」も含まれるからです。ここに紹介されている具体的な工夫は、実際に有効と思われるものが多く含まれていますので興味のあるものを試してもらえればうれしく思います。

 

ではご紹介していきましょう!

こちらの本の特色として私が感じたことは以下の3つです。

1,感情と脳を結びつけて理解できる

2,ネガティブ→ポジティブな感情になりやすい工夫が具体的に紹介されている

3,ネガティブな感情のリセットに役立つ生活習慣も紹介されている

以下、1つずつ掘り下げていきます。

1,感情と脳を結びつけて理解できる

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著者は「感情は脳内物質やホルモンの変化にすぎない」と冒頭から喝破します。

私たちは苦しい状況におかれると不安や恐怖に支配され気分も落ち込みます。しかし、 それは生体のストレス 反応、条件反射のようなものなのです。

では感情を大きく「苦しい」「楽しい」に分けた場合、どのような脳内物質が分泌されるのでしょうか。

「苦しい」・・・「アドレナリン」「ノルアドレナリン」「コーチゾール(コルチゾール)」。これらは「三大ストレスホルモン」と呼ばれています。

「楽しい」・・・ドーパミン」「エンドルフィン」「セロトニン

ドーパミン」は「幸福物質」とも言われ、目標や夢が達成されたとき、これから楽しい時が起こるときに分泌されます。「ワクワク」「ドキドキ」というやつです。

「エンドルフィン」は「快楽物質」とも言われ、ドーパミンの約20倍の「幸福感」をもたらしてくれるそうです。気分が高揚しているとき、激しい運動をしているときです。

この2つは「興奮系」つまり「ホットな楽しさ」と関連しています。一方「鎮静系」つまり「クールな楽しさ」と関係するのが「セロトニン」です。

セロトニン」は「癒しの物質」とも言われ、マッサージをしてもらっているときのリラックス感や自然のなかのやすらぎ感などがそれにあたります。太陽光にあたることでこのセロトニンが分泌されやすくなるという話もありますね。冒頭で私が言った「ラク」とはセロトニンによるリラックスややすらぎのことを指しています。

 

つまり「苦しい」と感じるときには脳内物質もストレスホルモンが分泌されているため、できるだけ「楽しい」と捉えることで、実際に幸福に関わる脳内物質が分泌されやすくなるというわけです。

 

このように、感情は脳内物質の変化によるものと捉えることで、「望ましい脳内物質を分泌するためにはどうしたらいいのだろう?」と考えることができます。

 

2,ネガティブ→ポジティブな感情になりやすい工夫が具体的に紹介されている

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本書では多くの具体的な工夫が書かれていますが、そのなかでも私のおすすめしたい工夫を5つご紹介します。

(1)鳥の目で全体を眺める 

苦しい人は視野狭窄に陥りがちです。「苦しいことしかない!」と思うときこそ要注意。そんなときは意識的に鳥の目で全体を眺めてみるとよいでしょう。具体的には、「数値化する」工夫が紹介されています。これは、以下のようなやりとりで示されています。

医師:あなたが今 まで一番調子が悪かった状態を0点。健康で暮らしていた状態を100点とすると、今の調子は何点くらいでしょう?

患者:20点です

医師:病院に来た時は何点でしたか?

患者:0点でした

医師:20点あがったんですね。どのあたりがよくなったのでしょう?

患者:そういえば日中のイライラが少し減ったような気がします

このようなやりとりの中で、自分の状態を「相対化」するわけですね。これを自分一人でする場合は必ず「記録」することが大切です。日記や手帳、日記アプリや健康管理アプリなどに記録していき、定期的に振り返る。そうすれば、視野狭窄から脱しやすくなります。

(2)自発的な言葉を使う

樺沢先生はスクワットの例を出して「あと5回もある!」と言うのではなく「あと5回もできる!」「あと5回しかできない!」と言う方がよいと言います。なぜなら「やらされ感」があるとノルアドレナリンが分泌される一方、自発的にするとドーパミンが分泌されるからです。取り組み方を変えるだけで、分泌される脳内物質がストレスホルモンから幸福物質に換わるのですから、これはすぐにでも試したいところですね。

(3)「考えれば解決できる問題」だけを考える

私たちの悩みにはしばしば「変えられない」ことが混ざっています。例えば、過去や他人が最たるものです。このような「変えられない状況を変えようとすること」が大きなストレスとなります。ここで心理学者エリック・バーンの言葉が紹介されます。

過去と他人は変えられない。

しかし今ここから始まる未来と自分は変えられる。

ですから、「今自分ができることをする」ことに尽きるわけですね。また、特に対人関係の悩みでは「苦しいときに原因を除去しようとしない」ことも大切です。対人関係において「原因の除去」はできないことが多いのです。例えば、そりが合わない上司、パートナー、クラスメイトなどなど。原因は除去できないが、自分にできることを考えるということですね(例:相手と距離を置く、接する時間を減らす)。

ちなみに、こちらの本ではありませんが、林修さんがマーケターの森岡毅さんとの対談で話したこちらの言葉がまさにそうだと思います。

「数学をきちんとやってこなかった人って、よく“定数”を動かそうとするんですよ。それは動かない、“変数”は努力とかで変わるけど、定数は与えられたものとしてやるしかないっていう話を時々するんです」

変数にいかに力を注ぐかが大切ですね。

(4)心配事の96%は起こらない

「苦しい」理由の大きなものは「不安」だと言います。米国ミシガン大学の研究チームの心配事の実地調査の結果、「心配事の80% は起こらない」ことが明らかになりました。さらに残り20% のうち、16% は準備をしていれば対応可能なものでした。つまり、心配事のうち実際に起こるのはたったの4%だったそうです。

未来を先取りして不安になることを専門的には「予期不安」と言います。言ってしまえば予期不安の96%は取り越し苦労ということになります。それなのに「無」から不安を自分で生み出してしまい「苦しい」と感じている訳です。逆を言えば、この知識を身に着けて「なんとかなる」と思い「今」できることをすることが対処法になり得るということでしょう。

(5)嫌いという感情のリセット術

職場でも学校でも「嫌い」な人がいて、そのため感情がかき乱されることがあるかもしれません。樺沢先生は「嫌い=好きではない、は脳のエラー」と言います。

ミニワークとして、自分の職場の人10人を思い浮かべて「好き・嫌い」の2つの分類すると、「好き」は8人、「嫌い」は2人など「嫌い」に数人が入ると思います。では次に、「好はき・ふつう・嫌い」の3つに分類したらどうでしょうか?大嫌いな人もいるでしょうが、あまり好きでなくても「毎日嫌がらせをされる訳ではない」「直接の利害関係はない」などの人は「ふつう」に分類されるかもしれません。私たちの脳の古い層にある「偏桃体」は「快・不快」の2つに分類するそうですが、新しい層の理性的判断によって3つに分類できれば、「『ふつう』に分類される人だからまあいいか」と捉えられて「苦しさ」も少しやわらぐことがあるでしょう。

3,ネガティブな感情のリセットに役立つ生活習慣も紹介されている

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感情のリセットの効果を高めるための生活習慣についても紹介されています。その中でも私も臨床でお薦めしている3つをご紹介します。

 

(1)睡眠

睡眠はメンタルの健康度を瞬時に測る指標だそうです。これは私も臨床で実感します。子どもでも大人でも睡眠を十分にとれない日が続いている人は精神的・情緒的に不安定になりやすいように思います。樺沢先生は「睡眠不足は心の赤信号」と言います。ここで厚労省のうつと睡眠の調査が紹介されます。

対象:20歳以上の男女約2万5千人

内容:睡眠時間ごとのうつ状態の割合を比較

結果:「7時間以上8時間未満の人」→「うつ状態」割合が最も低い

   「5時間未満の人」→ 47.9%がうつ状態

   「10時間以上」→50.2%がうつ状態

   →睡眠不足か長時間睡眠の人にうつ状態が多い。

睡眠不足だけではなく、長すぎる睡眠もうつ状態を関連しているということですね。

では健康的な睡眠とは何か、それは「量(時間)」と「質(熟眠感)」と言います。つまり、7時間以上眠れているか、ぐっすり眠れているか、この両方が備わっていることが健康な睡眠の目安となります。そして、よく眠れるための「7つの工夫」も示されていました。 

(2)適度に運動する

ラットの研究で運動がストレス耐性を上げることや、米国精神医学会のうつ病治療に「運動療法」が2010年のガイドラインから加わったこと、それから運動はセロトニンドーパミンノルアドレナリンという主要な脳内物質の放出を調整するそうです。

では具体的にはどんな運動がよいのでしょうか。それは「1日1時間以上、中強度の有酸素運動を週2回以上する」ことです。有酸素運動とは、呼吸をしながら行う運動の事です。例えば、ウォーキング、ランニング、自転車こぎ、水泳、エアロビクス などですね。ちなみに、無酸素運動とは、ダッシュなどの短距離走筋肉トレーニングを指します。 

(3)たっぷり休養する

私たちは昼間は仕事や家事など、緊張感や興奮状態で行っています。これは内臓の機能を支配する自律神経の中の交感神経(興奮をつかさどる神経)が優位になっている状態です。休養するためには、交感神経ではなく副交感神経(リラックスをつかさどる神経)を優位にしてあげる必要があります。そうすることで体が休まります。

具体的な工夫として5つ上げられています。それは、

①入浴:40度未満の風呂につかる(40度以上なら寝る2時間前に)

②ストレッチなどの軽い運動

③ゆったり「休む」

④深呼吸、腹式呼吸

⑤3行ポジティブ日記(最も記憶されやすい寝る前15分にポジティブなことを思い出す)

です。

 

感情はいつでもどこでも私たちにつきまといます。やっかいなものである一方、捉え方を変えれば幸せにもしてくれるものです。また、感情とうまく付き合うことで状況は変わらなくても生活のしやすさが向上することもあります。

 

よろしければご一読ください。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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